2021年7月22日 / 最終更新日時 : 2021年7月25日 touzainozomu 詩歌漫遊 たちのぼり南のはてに雲はあれど照る日くまなきころの虚(おほぞら) 藤原定家 たちのぼり南のはてに雲はあれど照る日くまなきころの虚おほぞら 訳)もくもく立ちのぼる雲、ああ 南のそらの果てに 雲が覆われている。しかし 地にはあますことなく陽が照りつけている その夏の盛りの大空よ […]
2021年7月17日 / 最終更新日時 : 2021年7月17日 touzainozomu 詩歌漫遊 小さき山羊飼ふ空想もいつからかしばし語りて先に妻が笑ふ 近藤芳美 ◯『静かなる意志』(1949)所収。どこか牧歌を匂わすようで微笑ましい一首。犬でも猫でもなくヤギであるところに、このうたの生命があり、同時に作者の人柄がかいま見える。ときおりじぶんの胸にひらめいたたのしい空想を、気がつけ […]
2021年7月14日 / 最終更新日時 : 2021年7月14日 touzainozomu 詩歌漫遊 遠空に今し消えむとする雲の孤雲見をり拳かたくして 前川佐美雄 遠空とほぞらに今し消えむとする雲の孤雲ひとりぐも見をり拳けんかたくして 前川佐美雄さみお 〇『捜神』(1964)所収。口でどなるだけが怒ることではない。むしろそれは、怒りの質の […]
2021年7月10日 / 最終更新日時 : 2021年7月14日 touzainozomu 詩歌漫遊 こぞの夏荒れたる水のあとと聞く道の辺に咲く紫の花 湯川秀樹 ◯『深山木』(1971)所収。前書き「飛騨の平湯にて」。湯川秀樹は日本人初のノーベル賞(物理学賞)受賞者で高名な科学者であったが、漢籍や日本の古典に造詣がふかく、みづからも和歌を詠んだ。中学時代は厭世観におそわれ西行に傾 […]
2021年7月9日 / 最終更新日時 : 2021年7月14日 touzainozomu 詩歌漫遊 漱石 堀口大學 漱石 漱石は文学博士を拒んだ 然し彼の一生の文学は よろこんでそれを受ける 重要な一点は実にここにある 込み合ひますから 懐中物御用心! ◯『砂の枕』(1926)所収。堀口大學はエロスとエスプリ […]
2021年7月5日 / 最終更新日時 : 2021年7月5日 touzainozomu 詩歌漫遊 われに似たる一人の女不倫にて乳削ぎの刑に遭はざりしや古代に 中城ふみ子 『乳房喪失』(1954)所収。或るひとりの抱く苦しみは、厳密にみればそれ以前にも以後にもそれとおなじものは存在せず、そのひとの中にのみ存在する。おなじ出来事に遭遇したとしても、おのおの抱く感情の深さや色あいは異なる。それ […]
2021年7月4日 / 最終更新日時 : 2021年7月4日 touzainozomu 詩歌漫遊 海の子は高き帆桁に跨がりぬ雲にまがひしいさな船かな 吉井勇 ◯『酒ほがひ』(1910)所収。「海の墓」より。「いさな」はクジラの古称。「いさな船」は作者の造語のようだが、捕鯨船のことだろう。吉井の父は海軍の軍人で、職を辞したあとは捕鯨会社につとめたこともあり、その影響がこの連作に […]
2021年6月30日 / 最終更新日時 : 2021年6月30日 touzainozomu 詩歌漫遊 真木の葉のしなふ勢能山しのはずて我が越え行けば木の葉知りけむ 小田事 真木の葉のしなふ勢能せの山しのはずて我わが越え行けば木の葉知りけむ 二九一 小田をだの事つかふ 訳)真木の葉が しなやかにたわむ勢能山 いまは愛でずに わたしは超えてゆくが 木の葉は知ってくれただろう […]
2021年6月29日 / 最終更新日時 : 2021年6月30日 touzainozomu 詩歌漫遊 海の底奥を深めて我が思へる君には逢はむ年は経ぬとも 中臣女郎 海わたの底奥おきを深めて我あが思もへる君には逢はむ年は経へぬとも 六七六 中臣なかとみの女郎いらつめ 訳)ワタノソコ こころの奥底から わたしがおもいをよせる あなたにきっと逢いましょう 幾星霜を経ようとも […]
2021年6月25日 / 最終更新日時 : 2022年1月11日 touzainozomu 詩歌漫遊 夢さめてねざめの床の浮くばかり恋ひきとつげよ西へゆく月 菅原孝標の女 訳)夢がさめて 寝覚めたての床は なみだで浮かんばかり それほど恋しくおもったとつげておくれ 西へゆく月よ ◯『更級日記』より。日記の後半、老いた作者の回想が断片的に書かれている箇所がある。なかでも、宮中 […]