真砂なす数なき星の其の中に吾に向ひて光る星あり   正岡子規

真砂なす数なき星の其の中に吾に向ひて光る星あり   正岡子規(1967〜1902)

◯『竹乃里歌』所収。明治33(1900)年作。「真砂」はこまかい砂。「浜の真砂」で、数が多いことをたとえていう。ゆえに、「数なき」は数が多くて数えきれないこと。あまたの星がかかやく中に、子規はじぶんに向かって光っているひとつの星の存在を感じる。下界と天界、ともに数のひしめきあうなかにひとつの小さないのちが息づいている。このうたで子規に向かって光っている星は、きっと六等星のようなかすかな光の星であろう。病に臥す子規が、床から夜空を見あげてこのうたを詠んだとおもうと、ひとつの星とひとりの人のしめやかな交歓にこころをうたれる。単純でありながら清新な魅力があり、よむたびに滋味のでてくる佳首。

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