乞食かな天地ヲ着たる夏衣 其角
乞食かな天地ヲ着たる夏衣 其角 (1661〜1707)
◯『虚栗(みなしぐり)』所収。其角は芭蕉の高弟で、生粋の江戸っ子。奇想をもっておどろかせるような句が多い。とはいえ、それだけにはとどまらない人物。
おれは乞食、財もなく家もなくそして服すら着ていない裸一貫だ、だがよく御覧、おれは天地を身にまとっている、これがおれの夏衣なのさ、という。豪放磊落、わるくいえば法螺吹きのような句。こうした壮大な法螺は、明治にはいってすがたを消してしまった。むしろ迫害され、追放され、かわりに「マジメ」が居座った。いまの東京を、いまのわれわれを其角がみたらなんと洒落のめすだろうか。
鐘一ツうれぬ日はなし江戸の春
十五から酒を呑出てけふの月
鯛は花は江戸に生れてけふの月