おもひなく夜の駅出でてわれ歩むぬかるみは刃のごとく氷れり   宮柊二

歌集『日本挽歌』(1953)所収。「孤独」より。凍てつくような冬の夜、仕事帰りだろうか、ぼんやりと駅を出てあるいてゆくとぬかるみが氷りついている。それが「刃のごとく」みえるのは、作者のこころに何かさしせまるものがあるからだろう。刃のごとく氷るぬかるみの上を作者はあるいてゆく。単なる写生にとどまらず、秘めている孤愁もしぜんに暗示されていて味わい深い。

柊二しゅうじは北原白秋に師事し「多摩」に参加、のち1953年に歌誌「コスモス」を主宰創刊する。

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