2021年6月30日 / 最終更新日時 : 2021年6月30日 touzainozomu 詩歌漫遊 真木の葉のしなふ勢能山しのはずて我が越え行けば木の葉知りけむ 小田事 真木の葉のしなふ勢能せの山しのはずて我わが越え行けば木の葉知りけむ 二九一 小田をだの事つかふ 訳)真木の葉が しなやかにたわむ勢能山 いまは愛でずに わたしは超えてゆくが 木の葉は知ってくれただろう […]
2021年6月29日 / 最終更新日時 : 2021年6月30日 touzainozomu 詩歌漫遊 海の底奥を深めて我が思へる君には逢はむ年は経ぬとも 中臣女郎 海わたの底奥おきを深めて我あが思もへる君には逢はむ年は経へぬとも 六七六 中臣なかとみの女郎いらつめ 訳)ワタノソコ こころの奥底から わたしがおもいをよせる あなたにきっと逢いましょう 幾星霜を経ようとも […]
2021年6月25日 / 最終更新日時 : 2022年1月11日 touzainozomu 詩歌漫遊 夢さめてねざめの床の浮くばかり恋ひきとつげよ西へゆく月 菅原孝標の女 訳)夢がさめて 寝覚めたての床は なみだで浮かんばかり それほど恋しくおもったとつげておくれ 西へゆく月よ ◯『更級日記』より。日記の後半、老いた作者の回想が断片的に書かれている箇所がある。なかでも、宮中 […]
2021年6月24日 / 最終更新日時 : 2021年6月25日 touzainozomu 詩歌漫遊 迫りくる楯怯えつつ怯えつつ確かめている私の実在 道浦母都子 ◯歌集『無援の抒情』(1980)所収。巻頭歌。60年代末期の学生運動、デモ隊をくむ学生に機動隊の楯がじりじりとせまってくる。デモ隊にいる女学生はおびえながらもその場にとどまり立ちむかうことで、生の重み、律動を確かめている […]
2021年6月20日 / 最終更新日時 : 2021年6月20日 touzainozomu 詩歌漫遊 ますらをや片恋せむと嘆けども醜のますらをなほ恋ひにけり 舎人皇子 ますらをや片恋かたこひせむと嘆けども醜しこのますらをなほ恋ひにけり 舎人皇子 〇『万葉集』巻二・一一七。舎人皇子は天武天皇の第三皇子で、『日本書紀』の編纂にも関わった。「ますらを」は立派な男子。ここでは […]
2021年6月16日 / 最終更新日時 : 2021年6月20日 touzainozomu 詩歌漫遊 おもひなく夜の駅出でてわれ歩むぬかるみは刃のごとく氷れり 宮柊二 歌集『日本挽歌』(1953)所収。「孤独」より。凍てつくような冬の夜、仕事帰りだろうか、ぼんやりと駅を出てあるいてゆくとぬかるみが氷りついている。それが「刃のごとく」みえるのは、作者のこころに何かさしせまるものがあるから […]
2021年6月16日 / 最終更新日時 : 2021年6月20日 touzainozomu 詩歌漫遊 いたづらに身をぞ捨てつる人を思ふ心や深き谷となるらん 和泉式部 いたづらに身をぞ捨てつる人を思ふ心や深き谷となるらん 和泉式部 訳)いたづらに わが身を捨ててしまった。 人を恋慕する この心こそが深い 谷となるのだろうか 『和泉式部集』上、恋。和泉式部は平安中期の […]
2021年6月11日 / 最終更新日時 : 2021年6月12日 touzainozomu 詩歌漫遊 蟻の国の事知らず掃く箒哉 高浜虚子 蟻の国の事知らず掃く箒哉 高浜虚子 ◯季語は蟻(夏)。図鑑をひらくと、おどろくほど巧緻なアリの巣がびんのなかにつくられている図が見られる。いくつもの部屋に仕切られていて、アリがおのおのの役割を担いつつ女王アリに仕えてい […]
2021年6月9日 / 最終更新日時 : 2021年11月29日 touzainozomu 詩歌漫遊 ゆふだちのはげしかりつる名残かな晴れゆく軒にのこる白露 慈円 ゆふだちのはげしかりつる名残なごりかな晴れゆく軒のきにのこる白露しらつゆ 慈円 訳)夕立ちが はげしく降った なごりがあるよ 晴れてゆく軒端に しら露がひかっている &nbs […]
2021年6月9日 / 最終更新日時 : 2021年6月9日 touzainozomu 詩歌漫遊 さみだれの晴れ間も見えぬ雲路より山ほととぎす鳴きて過ぐなり 西行 さみだれの晴れ間も見えぬ雲路くもぢより山ほととぎす鳴きて過すぐなり 西行 訳)五月雨どき なかなか晴れない 雲のみちを 山ほととぎすが 鳴きながら過ぎてゆくようだ   […]