デモ隊の列途切れるな 途切れないことでやがては川になるのだ 萩原慎一郎

○歌集『滑走路』所収。日本の市民社会はいまだ成熟していない。われわれは寡黙を美徳とし口をつむぐか、激情にわれをわすれて猪突猛進するかの両極端におちいりやすい。その谷間を怒れる市民が列をなしてあるいてゆく。その列にこころをよせる青年がいる。青年は、この行進が川のようにながれつづけ、人びとが自由のためにたたかってゆく未来を願っている。いま、川はながれているだろうか。

破壊するテロリズムとは幼稚なる行為そのものでしかないのだ

負の連鎖断ち切ることはできないかテロに空爆 空爆にテロ

東京大空襲走って生きた祖父がいてぼくのいのちがここにあるのだ

箱詰めの社会の底で潰された蜜柑のごとき若者がいる

ぼくも非正規きみも非正規秋がきて牛丼屋にて牛丼食べる

(以上『滑走路』より)

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