2021年4月28日 / 最終更新日時 : 2021年4月28日 touzainozomu 詩歌漫遊 デモ隊の列途切れるな 途切れないことでやがては川になるのだ 萩原慎一郎 ○歌集『滑走路』所収。日本の市民社会はいまだ成熟していない。われわれは寡黙を美徳とし口をつむぐか、激情にわれをわすれて猪突猛進するかの両極端におちいりやすい。その谷間を怒れる市民が列をなしてあるいてゆく。その列にこころを […]
2021年4月26日 / 最終更新日時 : 2021年4月27日 touzainozomu 詩歌漫遊 骨拾ふ人にしたしき菫かな 蕪村 骨こつ拾ふ人にしたしき菫すみれかな 蕪村 〇「骨」と「すみれ」という取り合わせの妙。火葬場で荼毘だびに付した骨をひとり一人故人をしのびつつひろう。 春のうららかな野原、あるいは山辺でおこなわれたのだろうか […]
2021年4月25日 / 最終更新日時 : 2021年4月26日 touzainozomu 詩歌漫遊 しのばじよ我ふりすててゆく春のなごりやすらふ雨の夕暮 藤原定家 訳:偲ぶまい わたしを見捨てて 去ってゆく春が なごり惜しそうになおもとどまり しとしとふらす雨の夕暮を ○『拾遺愚草』秋日侍太上皇仙洞同詠百首応製和歌より。定家三十九歳。春のおわりを擬人化 […]
2021年4月25日 / 最終更新日時 : 2021年6月9日 touzainozomu 詩歌漫遊 里びたる犬のこゑにぞきこえつる竹よりおくの人の家居は 藤原定家 訳)田舎びた 犬のこえに はっとした この竹林のおくに だれか住んでいるのか ○『拾遺愚草』閑居百首。また『玉葉和歌集』雑歌。ただし『玉葉』では第三句は「知られける」。 定家二 […]
2021年4月20日 / 最終更新日時 : 2022年1月11日 touzainozomu 詩歌漫遊 君にちかふ阿蘇の煙の絶ゆるとも萬葉集の歌ほろぶとも 吉井勇 ○『酒ほがひ』所収。吉井勇は『明星』出身の歌人で、与謝野晶子・寛の薫育をうけた。第一歌集の『酒ほがひ』は酒・恋・孤独といった青春のうたが奔放にみづみづしく詠まれている。 このような丈の大きいうたはそうお目にかかれません […]
2021年4月18日 / 最終更新日時 : 2022年1月11日 touzainozomu 詩歌漫遊 大名を馬からおろす桜哉 小林一茶 ○前書に「上野」。文政七年、一茶が六十二歳のときの句。権力者は命令をする。かれらは高いところから低き者を見おろす。でもそれは人間界のはなし。上野の桜はかれらを馬からひきずりおろす。「おろす」の語がきもで、大名という権力者 […]
2021年4月17日 / 最終更新日時 : 2022年1月11日 touzainozomu 詩歌漫遊 こみ合へる電車の隅にちぢこまるゆふべゆふべの我のいとしさ 石川啄木 こみ合へる電車の隅に ちぢこまる ゆふべゆふべの我のいとしさ 〇『一握の砂』所収。1908年に妻子を置いて単身上京した啄木は、朝日新聞に出社しつつ日々煩悶していた。貧乏、病苦、情事、社会情勢、人付き合い、そ […]